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魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 第八話 「その日、機動六課(前編)」 ヴィヴィオが六課にその身を預けるようになってしばらくが経ち、ヴィヴィオはなのはとフェイトを母と慕い、六課の隊員一同にも慣れ、バージルを兄としてすっかり懐いていた。 「はあああああ!!」 「おおおおおお!!」 空中を駆ける青き翼の道ウイングロード、その上を駆けるはスバルとギンガのナカジマ姉妹、ぶつかり合うは鋼の拳リボルバーナックル。 スバルの姉ギンガとマリーこと本局の技術官マリエル・アテンザが六課に出向き、なのはの提案によりギンガはスバルと模擬戦を行うこととなったのだった。 「こりゃそろそろ決まるな、ギンガの勝ちだな」 二人を見守る一同の中、ヴィータは教え子の勝負を予見する。 「まだだ」 その時、居合わせた者の中で最もこの勝負に興味の無いと思われた男が口を開く。 「なんだよバージル、こりゃ勝負は見えてんだろ?スバルの奴そろそろギンガに動きが追いつかなくなるぞ」 事実、姉妹の攻防はギンガの方がウイングロードを駆ける速度を上げ、肘鉄や蹴りを含めたコンビネーションの数を増やし、スバルは防御障壁の展開すらままならなくなっていた。 「確かに防御も甘く、受ける打撃も増えている、しかしナカジマは防げないのではない、防がないのだ」 「なんだよそれ、それじゃあいつワザとあんなにボコラレてんのかよ」 「“読んで”いるのだろうおそらく奴は…」 ウイングロード中央でぶつかり合った姉妹は火花の散るほどの打撃の応酬を繰り広げる。 (よし…少し分かってきた、次は) スバルが一人、自分の感覚を研ぎ澄ます中、ギンガの左のリボルバーナックルが魔力を込めた右のフックに次いで裏拳を飛ばしてくる。 フックを障壁つきの左肘で防いだスバルの視界にはギンガの裏拳は見えていない、ギンガは勝利を確信し裏拳を寸止めしようとするが、その鉄拳は空を切る。 「なっ!」 次の瞬間ギンガの身体は、沈みこんだ反動から繰り出されるスバルのアッパーを喰らい後方の空へと吹き飛ぶ。 「まさか!私の動きを読んだの? やるじゃないスバル」 「へへ~昔の私とはちょ~っと違うんだよギン姉、なんせストライカーだって泣き出す先生がいるんだから」 二人は真剣勝負とは思えないほど楽しそうな顔で、先ほどとは打って変わった白熱の攻防で青空を彩る。 「スバルはだいぶ使えるようになったな」 「当たり前だ、俺からあれだけ学んで使えなければ犬にも劣る」 シグナムの言葉にバージルが相も変らぬ辛口を吐くがその顔は無表情の中にも喜びを感じられた、彼もスバルの目覚しい成長を少しは評価しているようだった。 「そ~だな~、なんせ“お兄ちゃん”だもんな~教えちまうよな~色々と」 「……うるさいぞ鉄槌」 ヴィータは命知らずにも、またバージルを挑発する、実はスバルはここ最近ヴィヴィオにあやかってバージルをお兄ちゃんと呼ぼうとしているのだ。 ちなみに、この時バージルの中で“将来ヴィータと1対1で模擬戦した時に串刺す幻影剣”の数は累計300本を越えていた(無論、非殺傷だが)。 下の一同がそんなやりとりをしていると、上空ではナカジマ姉妹の戦いがもう終わろうとしていた。 交錯する二つの青い道、ぶつかる二つの影、ギンガの左拳はスバルの眼前に寸止めされるが、振りの大きすぎたスバルの右拳は大きく空ぶっていた。 「本当に強くなったわねスバル」 ギンガは成長した妹に微笑む。 「う~…今日こそは勝てると思ったのに…」 姉妹の勝負は今日も姉の勝利で終わった。 二人の模擬戦が終わり、なのはから隊長陣とフォワードメンバーの集団戦が告げられる中、なにやらマリーと話していたバージルに話が飛ぶ。 「バージルさんもどうですか?ギンガも入れて5対5の模擬戦なんて」 「ほう、面白いな、いいだろう…今、調整の済んだ“もう一つ”のデバイスをアテンザから受け取った所だ」 「そういえば、デバイスもう一つ貰ってましたね、どんなのですか?」 「ナカジマのデバイスと同じような物だが強度が満足いかなくてな、アテンザに改良を頼んでいた」 なのはとバージルがデバイスの話をする中、フォワードの4人はガクガクと震えていた。 「ど…どうしたの?」 そんな4人に心配そうに尋ねるギンガ。 「隊長たちだけでも大変なのに…バージルさんまで…あ…今日私の命日なのかな?…おかあさんがみえるよ…」 「幻影剣それ以上刺さないでください…刺さないでください…ささないでささないでさささ…」 スバルとティアナは虚空を見つめ何かうわ言を言っていた。 エリオとキャロは身を寄せ合ってハウハウッと小動物のように震えていた。 (何か、隊長たちより恐れられてる…でもあの隊長陣より怖いなんてありえないわよね…) 最近、成長したフォワードにバージルが模擬戦で容赦の無い事実を知らぬギンガはこれから自分の身に起こる悲劇を想像もできなかった。 「安心しろお前たち」 バージルがトラウマに浸っているフォワードに声をかける。 「今日はフォースエッジ・フェイクも幻影剣も使わん」 「ほ…ほんとうですか?」 怯えながらティアナが口を開く。 「ああ、今日はこちらを使う」 そう言うとバージルが右の中指と薬指に付けた二つの指輪を見せる、中指の物はフォースエッジ・フェイク、そして薬指の物は今までフォワード陣が機動を確認していない物だった。 「ではアテンザ、見せて貰おうか改良されたこいつの性能を」 その声と共にバージルの手足に白銀の手甲が現れる、その名はベオウルフ・フェイク、彼が前の世界で倒し、その力を調伏した魔獣の武具を模したデバイス。 今までシグナムとの模擬戦で何度か使っていたのだが、バージルの込めた魔力に耐え切れずに崩壊を繰り返していたのだ、今回はマリーの調整を受けた改良版であった。 結局、隊長陣にバージルを加えた模擬戦はフォワードメンバーとギンガの敗北で幕を閉じた、そして未来のストライカー達は泣きを見た、わりと本気で。 俺はふと読んでいた本(近代呪文詠唱講座)から顔を上げる、俺と六課の連中は訓練を終え食堂でのまどろむような時間を過ごしていた。 「う~にがいのきら~い」 「ちゃんと食べなきゃダメだよヴィヴィオ…バージルさんも何か言って下さい」 好き嫌いで駄々を捏ねるヴィヴィオに手を焼いた高町が俺に話を振る(まったく母を名乗るならちゃんと自分で叱れ…)。 「何を残している?」 「え~と人参をたくさんです」 「ならば、その分菓子と甘いものは禁止だ」 「うう~おにいちゃんがいじわるいってる~~」 ヴィヴィオがこちらを涙目で見るが、俺は気にせず自分のカップにコーヒーを注いだ(仮そめとは言え、親の言う事くらい聞かんかまったく…)。 「ふふ」 「どうした烈火」 「いやなに、お前も随分と変わったと思ってな」 烈火は俺を見てなにやら楽しそうに笑っている、まったく何がおかしいのやら… しかし烈火は静かに笑っていればいつもの猪武者ぶりも嘘のようだな、まあこんな事を言えばひどく機嫌を損ねるだろうが。 「ふんっ、くだらん」 俺はまた読んでいた魔道書物へと目を落とし、食後のコーヒーを口に運んだ。 他愛のないひと時、知識と力を満たしていく日々に今まで無かった充足を感じつつ、時間はゆっくりと過ぎていく。 管理局地上本部における公開意見陳述会がまじかに迫り、俺に二つの選択が浮かんだ。 八神曰く“地上本部が襲撃を受ける可能性があるので本部と六課待機組に戦力を二つに分ける”という話だ。 八神の言葉どおりなら敵はその日に地上本部を狙う可能性が高いらしい、つまり俺の“猟場”になる、しかし敵がヴィヴィオを狙うのなら混乱の生じるその時だろう。 この憶測は地上本部襲撃犯がヴィヴィオを狙う者と同一である仮定の上だが、今までの事件の推移を考えて可能性は低くないだろうな。 地上本部とヴィヴィオが同時に狙われる、俺が敵ならば大部隊の抵抗の予想される地上本部に主力を向ける、六課の守りは自然手薄になるから敵の数も質もたかが知れる。 六課に配置する人員に強力な者はさけないそうだ、癒し手と守護獣が残るらしいがこの二人では攻防のバランスが悪すぎるな… 同時に発生するだろう二つの“猟場”俺は迷うことなく地上本部へ出向く事にした、狩るならば獲物の数は多いに越したことはない。 だがこの選択はヴィヴィオの命を捨てるという事だ、敵の手に落ちれば命の保障などないのだからな… 公開意見陳述会に際し六課からスターズ分隊とバージルが先立って地上本部へと出向くことになりへリポートにて今まさに飛び立とうとしていた。 「ママ~おにいちゃ~ん」 そんなバージルたちに彼らを慕う幼い声が響く、ヴィヴィオが二人の下へ駆けてくる、泊まりの任務に出かけるなのはとバージルに寂しさを感じ、二人を見送りに来たのだった。 なのはにキャラメルミルクを作ってもらう約束をして貰ったヴィヴィオはやっと落ち着き、二人を見送る。 全員がヘリに乗ろうとした時バージルの制服の袖をヴィヴィオが掴む。 「何だ」 バージルは横目でヴィヴィオを見下ろしながら、冷たく言う。 「えと…あの…おにいちゃん、かえったらまたおうたきかせて?」 「……ああ…いいだろう」 バージル達を乗せたヘリが飛び立ち、地上本部へと向かう中なのはは窓から自分達を見送っているヴィヴィオに目をやる。 「それにしてもヴィヴィオ、なのはさんとバージルさんに懐いてますよねえ、羨ましいな~ バージルさん!是非私のお兄ちゃんに!」 「こら!バカスバル!あんたって子はまたそんな事を…」 「そうだ!良いこと思いついた、バージルさん!ギン姉のお婿さんになって下さい!そうすれば自然と私のお兄ちゃんに!」 「いい加減にしなさい!こんのバカスバルーー!」 今日もティアナの突っ込みは正確にスバルの後頭部を捉えた、いつもなら二人のそんなやりとりを呆れて見ているバージルだが、今日は静かに窓から外を眺めていた。 あんな約束をするつもりなど無かった、もし予想どうりに事件が起きればヴィヴィオの生きた姿を目にするのは今日が最後かもしれないという感傷か?…この俺が?バカバカしいな、そんな事などありえない。 ヴィヴィオは獲物をおびき寄せる為の生きた餌に過ぎない、俺が更に実戦で力を研ぎ澄ますのに必要な道具だ…しかしあの娘は俺がそんな風に見ているなど考えもしないのだろうな… 現場では会場内に入れる八神らはデバイスの持ち込みが禁止らしい(それなら魔道師を会場内警備に就かせる意味が無いだろうが…愚かな)俺と鉄槌以下ヒヨッ子どもは本部周辺の警備だそうだ。 本部周辺には有象無象のムシケラとは言えそれなりの数の局員が控えている、もし今日敵が来るなら、大軍と精鋭を揃えたとて簡単に陥落はすまい… 「もしや杞憂に終わるか?」 俺は鉄槌らに聞こえん程度に呟く、もしそうなら八神の言っていた襲撃の予測は外れるだろう、ならば六課への攻撃もあるまい……ということは俺はまたヴィヴィオに歌を聞かせるのか? 俺が一人、悪夢のような未来を考えていると融合機リィンフォースⅡを連れた鉄槌が話しかけてきた。 「なあバージル…」 「…ん、何だ鉄槌」 「正直、これだけ警備の厳しい所に攻撃を仕掛ける奴がいると思うか?リスクが高すぎてとても考えられねえよ」 「さあな、何らかの切り札がある可能性もあるだろう、鉄屑の大群とAMFの混成ならば雑魚どもでは話になるまい」 「切り札ねえ、AMF使ったって陥落なんて出来ねえと思うんだけどな、少なくとも正気の人間なら…」 「敵が必ずしも正気である保障などないだろうが、むしろ狂人の方が多いと考えろ…それに歯向かう敵を倒す事に変わりは無い」 「…違いねえな、悪いな変なこと聞いて…って言うか他の局員は雑魚扱いかよ!?」 「ひどいです~皆さんを能無しで給料泥棒の背景なんてあんまりです~」 「「いやそこまで言ってない」」 俺と鉄槌は同時に融合機に突っ込みを入れた、油断ならん、やはり八神の融合機だけはあるな… 襲撃の予想に否定的な二人の考えは、地上本部内部への戦闘機人の攻撃とメインコンピューターへのクラッキングそして本部周辺へのガジェットと悪魔の遠隔召喚により打ち破られる事となる、本部周辺は瞬く間に地獄の釜の底へとその様を変えた。 「屑が…」 バージルはまた一匹、塵を媒介に現れた“傲慢”の名を持つ低級悪魔をフォースエッジ・フェイクで切り伏せながら、円周状に高速展開していた6本の魔力刃、幻影剣の内の2本を射撃攻撃でこちらを狙っていたがジェットへ射出してこれを破壊した。 「まったく、これでは高町らにデバイスを届けに行った方が良かったか?」 スバル以下フォワードメンバーは隊長陣にデバイスを届けに行き、ヴィータと別れたバージルは本部周辺の敵掃討に打って出ていた。 突如、空中から降り注ぐ雷撃、バージルは防御障壁で防ぎながら天を仰ぎ見る。 「こんなモノまで来ているのか、この世界は本当に魔界と関係ないのか?」 雷撃の主は巨大なムカデ状のワーム型悪魔“ギガピード”電流を操り30メートルを超える長大な身体を有した天を駆ける悪魔である。 「まあこんな屑どもよりは斬り甲斐があるな…」 そう言うや否や、次の瞬間には高速空間転移で上空に移動し大きく上段にフォースエッジ・フェイクを構えていた。 「はあああ!!」 重力による落下と飛行魔法行使により速度を上げた上段斬り“兜割り”でギガピートの頭を叩き割り、さらにまだ息のある巨体に20以上の幻影剣を様々な位置へと空間転移させ射出。 ものの数分で息の根を止め、また地上へと降り立った彼は、悪魔には死をガジェットには破壊を与えていく。 既に彼の斬り伏せ、穿った悪魔とガジェットは300体をゆうに超えていた、彼の鬼神の ような戦いぶりに、防戦一方だった局員たちも少しは持ちこたえていた。 「…何だこの魔力は随分と高いな…」 突然、接近してきた高魔力にバージルは悪魔を斬り伏せながらロングアーチへ通信を入れる。 (こちらデイモス01、高魔力反応を確認した、飛来する敵航空戦力か?) (はい、そちらへ急接近中です、今ヴィータ副長とリィン曹長が向かっています、推定オーバーSランク!) シャーリーの返信にバージルは自身の鼓動が一瞬跳ねたのを感じ、心中にて呟く。 (オーバーSだと…ランクだけなら烈火より上ではないか…どうやら最高の獲物が来たな…) バージルは迷うことなく飛行魔法を行使、敵航空戦力へと向かう、Sランクを超える相手に自身がこの世界で習得した戦術が完成に近づきつつある事を感じながら、高揚する精神を自戒していた。 (しかし…地上本部襲撃が起こったという事は…六課も攻撃を受けているのだろうな…) ふと自分を兄と慕う、小さく無力な少女が彼の脳裏を駆けた。 続く。 前へ 目次へ 次へ
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魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 第十四話「Devil Strikers(前編)」 「ママー! おにいちゃーん!」 「ヴィヴィオ!」 青い空の下で母子が再び引き裂かれる、闇の剣士はその理不尽に心に宿った炎をさらに熱く滾らせた。 古代ベルカ文明の残した最強の戦船”聖王のゆりかご“その上に立つのは神に背き悪魔に魅入られた暗黒の司祭アーカム、ヴィヴィオを奪った彼をバージル達は魔力を高めて戦闘態勢をとる。 「アクセル…」 「刃似て、血に染めよ。穿て…」 ヴィヴィオを奪ったアーカムになのはとはやてが射撃魔法の呪文を紡ぎながらバージルは無言で射撃魔法の照準を合わせる。 「シューター!」 「ブラッディダガー!」 言葉と共にアクセルシューター・ブラッディダガー・幻影剣がアーカムの脳天めがけて飛び交う、非殺傷設定において一撃で昏倒させれば後はヴィヴィオを拾い上げるだけだったがその猛攻は強固な防御障壁で防がれた。 「警告無しで攻撃とは穏やかじゃないな」 アーカムは涼しい顔でなのは達の攻撃を防ぎ、手にしたヴィヴィオをバインドで宙に固定した。 「子供さらうハゲに容赦するほど甘くないだけや!」 余裕の表情のアーカムにはやてが吼える、ヴィヴィオを奪われ怒の炎を燃やすが今までの消耗になのはとはやては顔を歪める、そしておもむろにアーカムがその口を開いた。 「バージル、また私と手を組まないかね? このまま順調に行けばミッドチルダはじき私の手に落ちる。別にその人間達に肩入れする義理はないだろう?」 「断る、俺は貴様が気に入らんのでな」 「そうかね…しかし随分と変わってしまったのだなバージル」 「何?」 「かつての君は鋭く冷たい抜き身の刀身のような目だったが…今の君の目はまるで優しい人間のようだ」 「勝手な事を…」 バージルはアーカムの言葉に幻影剣を展開しフォースエッジ・フェイクを構えて答える、なのはとはやてもデバイスを手に身構えてアーカムを見据える、その時はやてが念話を展開した。 (バージルさん。この腹立つハゲって知り合いなん? なんか情報あったら教えて!) (以前の世界で少々手を組んだ男だ、名はアーカム。以前はこれほどの力は無かったが、この世界で何か力を手に入れているようだな…現在の実力は未知数だ) (それでも3人で戦えばなんとか…) (却下だ高町) (えっ!?) (お前は今までの消耗が激しすぎる。そこの木偶を持って離脱しろ) (でも! でもそんな…) (こんな所でお前が死んだらあの娘はどうなる? 俺が必ず助ける、お前は引け) (分かりました…) (八神! 俺が隙を作る、融合しろ。この男の性格から考えればまだ何か小細工を打ってくる可能性が高い) (了解や! 全力でいてこましたる! 行くよリィン!!) (はいです! 幼女をさらうようなロリペド野郎には全力全壊です!!) 次の瞬間バージルは空間転移でアーカムの周囲に幻影剣を展開しその頭部に向けて射出、その隙になのははバインドで簀巻きになったクアットロを連れて離脱、はやてはリィンと融合し戦闘準備を整える。 「行くぞ八神」 「準備完了や。行くでオッサン! 今日のはやてちゃんは優しくないから覚悟しいや!!」 アーカムはこの幻影剣の攻撃を軽く防ぎ、戦闘準備を整えた二人に余裕の顔を崩さぬまま周囲に大型の魔法陣を展開した。 「君達ほどの強さなら普通の悪魔では物足りないだろう? 特別に上位の悪魔でお相手しよう」 その言葉と共に強大な魔力を纏った3体の悪魔が現れた、その圧倒的なプレッシャーにはやては背筋に寒いもの感じる。 溶岩の如き灼熱の体液が身体に流れサソリのような尾針を持つ巨大な蜘蛛型悪魔“ファントム”、幾つもの顔が集まった頭部に赤い雷光を全身から放つ大鷲の悪魔“グリフォン”、骸骨のような顔と身体に黒き炎の魔力を燃やす剣持つ隻眼の悪魔“ボルヴェルク”。 魔界の中でも最高位に属する3体がさらに中・低級の悪魔やガジェットを引き連れてバージルとはやての前に姿を見せる。 「彼らは呼び出しが出来ても従える事が不可能な程の上位悪魔でね…しかしスパーダの血族が相手なら喜んで殺してくれるだろう」 「こんな美少女と美男子にゴツイ敵出して…趣味悪すぎや、あんた地獄行き決定やな」 はやての言葉が終わるや否や一斉に襲い掛かる敵の軍勢、ガジェットの射撃攻撃に加えてファントムが口から巨大な火炎弾を吐き宙を舞うグリフォンが雨のように雷撃を落とす、二人は防御障壁の構築と同時に側方に回避、射撃魔法でこれに応戦する。 ガジェットと低級悪魔ヘル・プライドの群れを遠距離攻撃で散らす二人に死神の姿の悪魔ヘル・ヴァンガードと両手に鎌を持つ“デス・サイズ”らが接近、死を与えんと手の鎌を次々に振りかぶる。 「シュヴァルツェ・ヴィルクング!!」 声と共に高魔力を込められたはやての両の拳が鎌もろとも数体のヘル・ヴァンガードの身体を四散させた、バージルも幻影剣を円周展開しながら閻魔刀とフォースエッジ・フェイクの刃でデス・サイズ以下数体を斬り裂き滅ぼす。 「邪魔だああ! 人間!!」 その時、人外の低さを持つ声と共に上空からグリフォンが雷撃を纏ってその巨体を躍らせ鋭い鉤爪をはやて目掛けて急降下を仕掛けてきた、回避の間に合わないはやてをバージルが高速転移魔法で接近し彼女を抱えてその攻撃を避ける。 「大丈夫か八神」 「私は大丈夫です。それよりバージルさんの方が…」 バージルははやてを助ける際にその身で彼女を守り背中をグリフォンの爪で大きく切り裂かれていた、傷からは止めどなく血が溢れ彼の青い服をどす黒く染める。 しかしはやてがバージルの傷を心配する暇も無く、燃え盛る体液を滾らせながら蜘蛛型の最上位悪魔ファントムが接近、二人を穿とうと巨大な前脚とサソリのようなその鋭い尾針で刺突の一撃を見舞う。 はやてが防御障壁でそれを防ぎ軋む障壁に顔を歪める、バージルはファントムの頭上に転移し兜割りを見舞おうと両手の白刃を振りかぶる、しかしその彼の身体をグリフォンの吐き出した赤い雷撃が襲う。 「バージルさん!! こうなったら…バリアバーストッ!!!」 はやては防御障壁を意図的に指向性炸裂させ眼前のファントムから距離をとり雷撃に吹き飛ばされたバージルに駆け寄る。 「大丈夫ですか!? こうなったらデアボリックエミッションかラグナロクで一掃して…」 「却下だ八神、お前の高威力の攻撃では魔力消費も隙も大きすぎる、不発に終われば一瞬で殺されるぞ。それにこの距離の大威力魔法ではその余波であの娘が危ない」 「そんなら一体ずつ各個撃破かいな…きつすぎやな」 バージルとはやては傷ついた身体で背を合わせて敵を一瞥する、二人を前後から挟み込むようにファントムとグリフォンがにじり寄り他の悪魔やガジェットも二人の周囲を囲み込む。 「さ~そろそろ死んじゃう時間だよ~ん♪ ヴィヴィオちゃんの前で派手におっ死んでね~」 いつの間にかその姿を黒い道化ジェスターに変えたアーカムが二人の危機を喜び耳障りな笑い声を上げる。 (融合してなんとか保っているが八神も消耗している。こうなったら“魔人化”で一気に叩くか? しかし俺と八神達の攻撃を軽く防いだアーカムの防御力を考えれば温存しておきたいのだが…) 迫る敵の脅威にバージルが自身の最高の切り札を出す算段を考えた時、遠方にてゆりかごに近づく影が呪文の言の葉を紡いだ。 三つ首の竜の上に立った一人の少女が静かに、だが強い意志を込めて呪文を唱える。 「我が求めるは極寒の凍気、氷結の獄犬よ、その凍て付く息吹きを我が竜に宿せ! フリージング・ブレス!!!」 その言葉と共に空を駆ける三つ首の氷竜フリードリッヒが高出力の魔力と凍気で形成された氷塊を撃ち出し灼熱の大蜘蛛ファントムの巨大な身体を凍りつかせた。 目の前で悪魔の中でも最上位に属するファントムが動きを封じられた事にグリフォンは声こそ上げなかったが大きな驚愕を覚える、その刹那上空を通り過ぎたヘリから白き閃光が舞い降りた。 「流ううううう星えええええ脚ううううう!!!!!!!」 それはバージルから学んだ最高の蹴り技、白き破壊の魔獣の力を宿した脚部のデバイスで少女はグリフォンの身体を貫いた。 「ぐおおおおお!!!」 絶叫を上げて悪魔が羽根を散らしながら吹き飛ぶ、さらに氷竜の上で己が得物を構えた若き槍騎士が身体に宿った時の悪魔の力を解放する。 「時よ加速しろ! クイックシルバー発動!!」 次の瞬間その槍騎士の身体は影も捉えられぬ速さで加速し、ゆりかご上部に集った低級悪魔やガジェットを一切の抵抗を許さず斬り裂き全て瞬殺した。 驚愕に目を丸くするジェスター(アーカム)の眼前に銃型デバイスが唐突に現れた。 「随分と大きな鼻ね、なんなら2つ3つ穴を増やして風通しを良くしてあげるわよ?」 突如現れた双銃を構える少女がジェスターの顔をその銃口で捕らえた、道化は魔力を込めた拳で少女に攻撃を仕掛けるがその攻撃は少女の身体を通り抜けたまるで水面の“影”のように、しかし少女の放った魔力弾は道化の顔を捉えたのだった。 「何!?」 元の姿の司祭服に戻ったアーカムは目を見開いた、先ほど目の前にいた少女は煙の如く姿を消してはるか遠方に移動していたのだ、高速転移の形跡は無いまるで“影”のように現れそして消えたのだ。 「至近距離の顔面直撃でも倒せない…なんてタフなのよ」 少女は双銃を構え仲間達と共にバージルとはやての下に集まる、それは悪魔の力を得た若き戦士達、機動六課フォワードメンバーである。 「お前達…」 「みんな…」 「バージルさん! 八神部隊長! 助けに来ました!!!」 突然の救援に唖然とするバージルとはやてに己が鉄拳に魔獣の力を纏った少女スバルは満面の笑みで答えた。 「スバル! 挨拶は後回し、こいつらまだ潰れてないわよ!!」 銃型デバイスを構えた少女ティアナが叫ぶ、フリードの凍気で凍りついたファントムがその灼熱の魔力を高めて全身を覆う氷を溶かし始めスバルの蹴りを受けて吹き飛んだグリフォンが再び宙に舞いバージル達に狙いをつけて赤き雷撃をその身に纏う。 「どうしますかバージルさん、部隊長!?」 「お前らはこの悪魔どもを叩け、俺はあの男を斬る」 バージルはティアナにそう言い残し即座にフォースエッジ・フェイクを構えてアーカムに向かって駆けた、しかし隻眼の悪魔ボルヴェルクがそのバージルに踊る。 ボルヴェルクはこの戦いの開始早々から自身の足元に剣を付きたて戦いの行方を見据えていた、バージルが後ろのアーカムに用があると感じたボルヴェルクはバージルが単身こちらに向かって来るまで待っていたのだ。 そしてその予想は的中しかつて自分を倒した最強の悪魔スパーダの息子であるバージルと剣を交えボルヴェルクは剣を荒々しく振るう、言葉で無く剣を持ってのみ語る魔界の武侠が歓喜に剣を躍らせる。 ボルヴェルクの轟剣を斬り返し早くヴィヴィオを助けんと閻魔刀を引き抜くしかし隻眼の悪魔はその剣速を上げてバージルと互角に斬り結ぶ、その時そんな二人の間に超高速の槍の刺突が割って入る。 それは魔界馬の力で時を加速させたエリオだった、エリオはストラーダの刃でボルヴェルクの剣を受け止めて叫ぶ。 「スバルさん! 今です!!」 「ベッキー行くよ! ゾディアック!!」 スバルがベオウルフの力により強力な白い魔力弾を撃ち出しボルヴェルクの剣を受け止めるエリオに支援攻撃を出す、その光弾はボルヴェルクの顔面に直撃しその身体を吹き飛ばした。 「バージルさん行ってください! ヴィヴィオを助けに!!」 「ここは僕達が何とかします!!」 スバルとエリオが勇ましく吼える、もはやバージルがヒヨッ子と呼んだ面影は微塵も無いあるのは正義を胸に抱く誇り高き戦士の気概のみ、バージルはその二人に背を向けてアーカムに向かって駆け出し、そして静かに呟いた。 「もうヒヨッ子呼ばわりは出来んな…」 勇ましく成長した弟子の姿に魔剣士は聞こえない程度の感嘆を残し守るべき少女を救わんと刃を構え邪悪なる司祭の下に向かった。 瞬時に発動した空間転移で距離は詰まりフォースエッジ・フェイクで繰り出されたバージルの斬撃がアーカムの意識を刈らんとその首筋に真一文字に走った、しかしその一閃はアーカムが出した黄金の剣に遮られる。 「君のデバイスはこの程度かね? バージル」 「何!?」 次の瞬間バージルの身体はアーカムの黄金の剣の発した高熱の光の波動に吹き飛ばされた。 「くっ!」 「どうだね? このエクスカリバー(聖剣)の威力は、これでも絞ったものなんだがね」 「下らん名前だな…貴様にはお似合いだ」 「これでもどこぞの管理外世界のロストロギアをデバイスに改造したものなんだよ、名前はともかく威力は素晴らしいだろう?」 アーカムはそう言いながら剣を天にかざして身体に魔力を高めていく、人間ではありえない凄まじい瘴気がその五体から立ち昇る。 「君とダンテに倒された私はこの世界に飛ばされてね、君達から受けた傷が深くて元の身体は使い物にならなくなってしまったよ…だから私は変わったのだよ今度こそ人間を超えた存在に…」 その言葉と共にアーカムの身体は黒い司祭服を突き破るほどに隆起して鋭角的で攻撃的な人外のものへと変える。 「悪魔の体組織を人造魔道師の技術で培養した身体に戦闘機人と同じ身体強化とAMF併用の対魔道師戦闘能力、さらにレリックコアを埋め込んで得られた無尽蔵の魔力を持つ。人造魔道師と戦闘機人の技術を基に生まれた人造悪魔…」 そして現れたのは翼と角を持つ悪魔の身体、在りし日の“伝説の魔剣士スパーダ”を模した身体へとその身を変えたアーカムの異形の姿、それはもはや人などではなかった。 「スカリエッティの作った最強最高の改造体、開発コード“人造悪魔ディアボロス”それが今の私だよ」 自分の父の姿を模倣されバージルはその顔に怒りの感情を刻む、そしてアーカムはその手をバインドで縛ったヴィヴィオに伸ばす。 「無敵の身体に最強の聖剣そして…」 アーカムは腹部から飛び出した無数の触手でヴィヴィオの身体を自分の胴体に括り付けた。 「やだ~! おにいちゃ~ん!!」 「これが君に対する最高の盾だよバージル。君にこの子供ごと私を斬れるかね? それとも消耗した君で今の私をこの子供だけ避けて斬れるかね?」 人間としての身も心も捨て悪魔と成った闇の司祭は幼き命を盾に魔剣士にその手の聖なる剣を向けた。 「日輪脚うううう!!!!」 決闘を邪魔された怒りにより激しさを増すボルヴェルクの剣だが、鉄拳の少女スバルはベオウルフとの融合で爆発的に威力を増大させた蹴りでこれを弾き返しさらにカウンターの連撃を叩き込みその強力な蹴撃でボルヴェルクを吹き飛ばした。 「エリオはティア達の所に行って!」 「えっ!? でもスバルさん一人じゃ…」 「私は大丈夫。ティアの新しい能力は魔力消費が大きいみたいだからサポートしてあげて」 「分かりました…でも無理しないで下さいね」 エリオはそう残してファントムとグリフォンの猛攻に晒さているはやてとフォワードの下に駆けた、スバルはそのエリオに目もくれずに拳をボルヴェルクに構える、一瞬でも隙を作れば殺されるという認識がスバルの意識を敵に釘付けたのだ。 (スバルこやつを一人で相手にするのは少々厳しいぞ…) スバルの頭に自身の得物と融合した悪魔ベオウルフの声が響く。 「強いのは戦って分かったけど…何か知ってるのベッキー?」 (こやつは魔界の戦士ボルヴェルク、我と同じくスパーダに敗れた悪魔の一人。魔界の中でも最高位に属する猛者よ) 「そっか…」 (今からでも遅くは無い。一人では苦戦は必至、他の者の助力を請えスバルよ) 「それは違うよ…私は一人じゃない」 (何?) 「私のこの拳には、お母さんとギン姉のなのはさんとバージルさんの技と心があるから…だから一人じゃない。それにマッハキャリバーとベッキーが一緒なら絶対に負けないよ!」 スバルは満面の笑顔でベオウルフに答える、その瞳には一片の恐怖も怯みも無く相棒のデバイスと自分に力を貸した悪魔に対する信頼に溢れていた。 (言ってくれるわ…あのスパーダの息子を助けるのは癪だが、そこまで言われて引いては白滅の魔獣の名が泣く! 我が力存分に振るえスバル!!) 「うん!!」 そう言うと同時にスバルは最高の加速でマッハキャリバーを駆ける、魔獣を宿した鉄の拳が魔界の戦士を倒すべく閃いた。 身体を覆っていた氷の封印を灼熱の魔力で破壊したファントムはアーカムの下に向かったバージルに激しい怒りを露にして溶岩のような体液を滾らせる。 「裏切り者の血族が! 逃がさんぞおお!!」 その巨大な悪魔に両手に銃型デバイスを持った少女は射撃魔法を見舞って注意を引き付けた。 「あんたの相手は私よデカブツ!!」 双銃の少女ティアナの射撃魔法はその大蜘蛛型悪魔の強固な外殻には傷一つ付けられなかったがそれは悪魔を逆上させるには十分な効果だった。 「ちっぽけな人間風情が!!!」 「“ちっぽけ”ねえ、あんたは随分と無駄にでかい図体してるけどちゃんと筋肉以外に中身は詰まってるのかしら?」 自分を越える圧倒的な力を持つ悪魔にティアナは小ばかにしたような挑発を仕掛けた、ファントムは怒りにその目を赤く光らせその巨大な前脚の一撃をティアナに振り落とした、しかしその攻撃はティアナの身体を煙の如く通り抜ける。 「残念、ハズレよ」 その言葉と共にファントムの眼前にいたティアナの身体は陽炎のように消え去り、ファントムの頭の上に“本物”のティアナが下り立ち悪魔の無防備な頭部に魔力弾を次々と叩き込む。 実体を持つ影“アフターイメージ”を操り敵を攻撃する力この能力こそ影の悪魔ドッペルゲンガーより得たティアナの新たなる能力である、先ほどファントムに攻撃と挑発を行ったのはこの影であり本物の彼女は幻術で姿を隠し隙を伺っていたのだ。 「ぐおおおおお!! 調子に乗るなあああ!!」 ファントムは頭上のティアナを突き刺そうとそのサソリのような尾針で刺突を繰り出す、しかしその一撃は時間加速の超高速移動で駆けつけた若き槍騎士エリオ・モンディアルの刃で弾かれる。 ゲリュオンの時間加速能力“クイックシルバー”を得たエリオからすればファントムの尾針の攻撃など止まっているも同然だった。 ファントムは自分の身体の上に乗ったティアナとエリオを振り払おうと脚部に凄まじい力を集中し跳躍、十数メートルの距離を一瞬で飛び上がった、その衝撃にティアナとエリオは身体を振り落とされる、二人は落とされると同時にデバイスを構え臨戦態勢をとった。 「エリオ、あいつの外殻かなり固いわよ。並の攻撃じゃ歯が立たない、狙いは頭部周辺! 全力で行くわよ!!」 「了解!!!」 急降下の軌道を二人に定めて落下するファントムの巨体を避けながら二人は同時にその身に宿った悪魔の力を解放した。 ゆりかご上空を飛ぶ巨大なる鷲の悪魔グリフォンが魔力で作り出した赤い稲妻を放ち目の前を飛び交うはやてを落とそうと執拗に攻撃を仕掛けてくる。 「どうした人間、もう限界かああ!?」 高速で繰り広げられる空中戦にはやては大技を使う隙を見出せず苦悶の表情で回避を続ける、はやては今までの魔力、体力の消耗にリィンとの融合も限界に近づき徐々に動きを鈍らせていく。 「これで終わりだ人間。死ねええええ!!!」 グリフォンの叫びと共に雷光で作られた電撃で作られた鳥“電気分身”がはやて目掛けて放たれる、高度の追尾性能を持つ電撃の大鷲にはやては遂に致命的な被弾を受けた、その怯みを逃さずグリフォンがその鉤爪を立てて迫る。 「フリード、ブラストレイ! フリージング・ブレス!!」 若き竜召喚師キャロ・ル・ルシエの掛け声と共に氷結の獄犬の力により三つ首の氷竜となった使役竜フリードリッヒがその三つの顎から紅蓮と凍気の塊を次々にグリフォンに放ちはやてへの追撃を食い止めた。 「ぐおおおお!!」 叫びと共にグリフォンは軌道を逸らし明後日の方向に飛んでいく、悪魔の雷撃を受けふらつくはやての下にキャロが三つ首の氷竜を従えて現れた。 「部隊長! 大丈夫ですか!?」 「キャロ…私はまだ大丈夫やから、それよりまた来るみたいや」 グリフォンはフリードの攻撃に翼に穴を穿たれながらも少しも勢いの衰えぬ力強さでまた宙を舞い雷撃を纏ってはやてとキャロに迫る。 「がはあっ!!」 黄金の聖剣が繰り出す斬撃にバージルは夥しい血飛沫を上げてその身に裂傷を刻まれた、アーカムとバージルの戦いはバージルの劣勢により凄惨を極めていた。 バージルはアーカムの身体に括られたヴィヴィオの為に閻魔刀を抜けず切り札“魔人化”も使えない状態で性能面で圧倒的に劣るフォースエッジ・フェイクをもってエクスカリバー(聖剣)と切り結んでいた。 「どうしたバージル、閻魔刀を抜かないのか? 魔人化はしないのか? 出来ないだろうな~、使えばその威力ではこの子供がただではすまないからねえ」 アーカムは異形と化した悪魔の顔を醜く歪めて血に塗れたバージルに嘲りの笑みを向けた、バージルは亀裂や刃こぼれを起こして崩壊寸前のフォースエッジ・フェイクを構えてその異形の人外に未だ覇気の衰えぬ眼光を注ぐ。 「はぁっ はぁっ…下らんことばかり…ほざくな…」 「哀れだなバージル、たった一人の人間の為に力を解放する事も出来ずに消耗し続けるなど哀れすぎて笑える程だよ」 アーカムは言葉と共に高速展開でバインドを形成しバージルの脚部を拘束、転移魔法による回避を封じ、手の聖剣型デバイスに魔力を収束し高出力の魔力波動を込めて大上段に剣を振りかぶった。 その斬撃を受ければ今のバージルの防御障壁は斬り裂かれフォースエッジ・フェイクは脆く砕け散ると易く想像が付く、悪魔の身体を持つ彼なら死にはしないだろうがヴィヴィオの救出は困難を極めるだろう。 しかしその刃はバージルに届くことはなかった…炎の翼を持つ誇り高きベルカの騎士が闇の剣士の救援に舞い降りる。 「大丈夫かバージル?」 暴虐たる聖剣の侵攻を食い止めたのは炎の魔剣レヴァンティン、振るうは烈火の剣精アギトとの融合を果たした誇り高き剣の騎士、地上本部に迫る悪魔とガジェットの軍勢を殲滅し戦友(とも)の救援に馳せ参じた烈火の将シグナムである。 「スカリエッティは逮捕された、戦闘機人も全員確保済みだ。もう貴様に勝ち目は無い! 大人しく投降しろ」 聖剣と鍔競りながらシグナムは凛とした声で敵の最後の司令塔であるアーカムに投降を促した。 「その程度がなんだと言うのだね? 戦闘機人を一体でも手に入れれば、あの男のコピーは確保できる。ゆりかごが軌道上に上がればミッド地上は殲滅、管理局の艦隊も沈められよう。つまり私の勝利はまったく揺るいでなどいないのだよ」 「ならば貴様をここで倒すっ!!」 シグナムは掛け声と共に爆炎を纏わせたレヴァンティンを払い悪魔の持つ聖剣を薙いでバージルと共にアーカムから距離をとる。 「その姿は…あの融合機か?」 「ああ」 「ゼストはどうした」 「死んだ。私が斬った」 「そうか、やはり…」 バージルはかつて自分と死合った男の死に一抹の寂しさを覚えた、刃を交えた際にその死期が近いことを漠然と感じていたがもし次があるなら今度こそ邪魔無しで戦いたかったという未練が僅かに脳裏を駆けた。 「…お前の剣に敗れて死んだのならばあの男も悔いはあるまい」 バージルは一言だけ今は亡き好敵手の為の言葉を小さく吐いた。 その二人の前に聖なる剣を手に下げたアーカムが悠々と歩み寄る。 「随分とまあ人間と仲良くなったものだなバージル? 人にも悪魔にも成りきれぬ哀れな半魔の君らしい…」 「黙れえっ!!!」 アーカムはシグナムの救援に救われたバージルに再び嘲りの言葉を吐くがその言葉はシグナムの激昂に遮られる。 「その汚い口で我が戦友(とも)を愚弄する言葉を吐く事は許さん!!」 シグナムはその鋭い眼光に紅蓮の怒りを込めてレヴァンティンをアーカムに突きつけた、しかしその身に覇気こそ満ちていたがシグナムの身体は地上本部防衛の戦闘により魔力を消耗し余裕など欠片も残されていなかった。 「まだ戦えるなバージル?」 「もちろんだ、お前こそ足を引っ張るなよ」 聖なる剣を持った邪悪なる悪魔に傷ついた闇の剣士と烈火の将はその刃を向けた。 続く。 前へ 目次へ 次へ
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SSプロジェクトとは ショートストーリープロジェクト、通称SSプロジェクト。 読み切りまたは2~5話ほどの短編小説を書き、 それに別の人(本人でも構いません)が挿絵をつけるという単純な企画です。 つまり小説を書く担当→文担当 挿絵を描く担当→絵担当 として様々な立場から小説を楽しめます。 SSプロジェクトと名乗っていますが、 一応長、中編小説も可とさせていただいております。 ただしその場合は管理人、心視葵までご連絡いただけるようお願いいたします。
https://w.atwiki.jp/dangeurarace/pages/19.html
SS作成方法 このページではダンゲロスSSRaceに投稿するSSの作成方法・内容の指針を説明します。 表SSRaceとほぼ同様の内容です。 作成するSSの「お題」大枠について 今回のゲームでは、参加キャラクターは『購買部にて一日限定一個、昼休みの間だけ販売される伝説のやきそばパン』を他のキャラクターに先駆けて購入することが目的となります。 ゲームの世界観などは基本設定・MAPをそれぞれご確認ください。 作成するSSの「お題」PCの扱い、MAPについて 自キャラ以外のPCについてSSに登場させる人数は任意となります。やきそばパン争奪戦において自分のキャラクターと直接争うキャラクターだけを描写しても構いませんし、他のキャラクター視点での描写を入れてももちろん構いません。 また、舞台は希望崎学園敷地内となります。詳細はMAPを参照してください。 設定上は4限終了後から5限開始前までの昼休みの間にやきそばパンを購入していただくことになります。SS構成上必要でしたらそれ以外の時間についての描写を入れることは禁止しません。 スタート地点は4限目の授業を受けていた地点になります。基本的に新校舎でしょうが、4限が体育の授業だったら校庭や武道場になるでしょうし、音楽や化学だったら芸術校舎になるでしょう。その辺りはプレイヤーの任意です。 NPCの登場は自由となります。 作成するSSの「お題」やきそばパンの購入条件について。 やきそばパンを購入するための条件は以下の通りとなります。 4限目の授業に最後まで参加していない者に伝説のやきそばパンを購入する権利は無い。 校則違反者に伝説のやきそばパンを購入する権利は無い。 限定一個のみの販売となる。 値段は108円(税込み) 作成するSSの内容について キャラクターの設定や能力の応用方法について、キャラクターの設定欄に書かれていないことであっても、後づけで設定を足すことは(それがキャラクターや伝説のやきそばパンに関することであっても)可能です。もちろん無理な後づけは読者を納得させるだけの説得力を持たせる必要があるでしょうから、十分に注意しましょう。 SSはやきそばパン争奪戦のみを書く必要はありません。昼休みの前後を膨らませてもよいでしょう。ただし、あまりにも長すぎるなどの理由で飽きた場合読者には途中で読むのをやめる権利があります。 幕間SSについて また、本戦のSSだけでなく、参加者同士の交流や、自分の(場合によっては他のキャラクターの)設定を深める幕間SS(補足SS)を作成するのもよいでしょう。 幕間SSはダンゲロス掲示板に立てた専用の幕間SSスレッド(準備中)に書きこんでください。 幕間SSに投稿期限はありません。好きな時に書きこみましょう。 幕間SSで事前に書いた設定を使って試合SSを作成するのもよいでしょう。ただし、読者に幕間SSを読む義務はありません。 SSが出来上がったら SS投稿期限内に作成したSSを投稿しましょう。投稿方法は次のページ【SS投稿方法】をご確認ください。 SS投稿期限を過ぎた場合、失格となります。十分にご注意ください。
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/824.html
140文字SS 140文字SS:ふたりはプリキュア&Max Heart 140文字SS:Splash☆Star 140文字SS:Yes!プリキュア5&GoGo 140文字SS:フレッシュプリキュア! 140文字SS:ハートキャッチプリキュア! 140文字SS:スイートプリキュア♪ 140文字SS:スマイルプリキュア! 140文字SS:ドキドキ!プリキュア 140文字SS:ハピネスチャージプリキュア! 140文字SS:Go!プリンセスプリキュア 140文字SS:魔法つかいプリキュア! 140文字SS:キラキラ☆プリキュアアラモード 140文字SS:HUGっと!プリキュア 140文字SS:スター☆トゥインクルプリキュア 140文字SS:ヒーリングっど❤プリキュア 140文字SS:トロピカル~ジュ!プリキュア 140文字SS:デリシャスパーティ♡プリキュア 140文字SS:ひろがるスカイ!プリキュア 140文字SS:わんだふるぷりきゅあ! 140文字SS:映画プリキュア○○スターズ 140文字SS:プリキュア&プリキュア!(プリキュア同士のコラボ) 140文字SS:プリキュア&○○○(プリキュアと、その他作品とのコラボ) 140文字SS:R18(全シリーズ) ※閲覧にはご注意下さい。
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その他SS 千咲ちゃんSS以外のガヴリールドロップアウトのSS一覧です。 項目名の横の▲▼をクリックするとソートできます。 No タイトル カテゴリ 内容 wiki公開日 001 [[]] 百合 2017/07/10
https://w.atwiki.jp/fleshyuri/pages/40.html
訪問者数 累計: - 今日: - 昨日: - ~お読み下さい~ 閲覧注意の表記をしていますが、18禁SSも保管庫には御座います。 また同性愛の描写を前提としてます。基本、18歳未満の方はご遠慮願います。 ラブ×せつな 美希×せつな 祈里×せつな ラブ×美希 ラブ×祈里 美希×祈里 継続型SS 複数 準SS 小ネタ 競作 ~これからSSを作ろうと考えてるあなたへ~ キャラのイメージ、世界観を大きく変えない・壊さない事が大事だと指摘がありました。 また、キャラの一人称のアドバイスもありましたのでチェックして見て下さい。 ラブ→「あたし」 美希→「アタシ」 ブッキー「私」or「わたし」 せつな「私」 口調ですが、ラブは明るく活発・美希は大人で冷静・ブッキーは引っ込み思案で恥かしがりや・せつなが 言葉短めのおとなしいイメージと思われます。参考にして製作チャレンジして見て下さい。 難しいと思われるようでしたら、TVを見返したりまるごとキュアパッションを見直すと良いと ご指摘がありました。 呼称一覧 ラブ 美希 祈里 せつな ラブ 美希たん ブッキー せつな 美希 ラブ ブッキー せつな 祈里 ラブちゃん 美希ちゃん せつなちゃん せつな ラブ 美希 ブッキー ~SS投下について~ SS職人ガイドライン キャラや物語のイメージはあまり崩さないようにしましょう 雑談や妄想で盛り上がってる時の投下は控えましょう SS投下前に、SSのタイトル・組み合わせ・おおよその消費レス数を宣言しましょう 1レスあたり60行までOKです 名前欄にSSのタイトル・トリップ、もしくは宣言時のレス番号は必須です (転載や続きを書く時の本人証明に使用、スレ内のSS抽出、NG指定に使用等) 三次創作(他職人の二次創作の続編・改編・イラスト化等)時、事前に宣言し 作者の応答を待つ、反応が無い場合は投下宣言&名前欄でNGし易くする等 ご配慮下さい SSは間隔を開けないよう投下、リアルタイム執筆は止めましょう SS投下完了後は終了宣言をしましょう ※SS投下中、住人はなるべく割り込みを自重しましょう 規制について ★改行規制 1レスにつき61行以上が規制対象です。 ★連投規制 30分以内に10レス目を書き込むと規制対象になります。 10レス以上の投下には9レス毎に30分のインターバルが必要です。支援は無効です。 投下に不安のある方は、避難所や酒場をご利用して頂いても構わないかもしれません。 その時は自分や職人さんたちがフォローしますので。 みんなでSSの世界、広めませんか?
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魔法少女リリカルなのは Strikers May Cry 第七話「Devils Never Cry」 日の光の一切届かぬ地下研究施設、生体ポットやガジェットが並び、壁には岩がむき出しの部分すらあり、余計にその場を殺風景な様にしている。 「まだ落ち込んでいるのか?」 銀髪に眼帯という似つかわしくない組み合わせに、さらに小柄な体格を引き立てるような大きなコートの少女、機人5番チンクが施設の隅で座り込む赤毛の少女に話しかける。 「…セッテ泣いてた…」 うずくまって顔を伏せる機人9番ノーヴェが今にも泣きそうな声で答える。 「まあ師であり敬愛するトーレがああなってはな…」 トーレは先のバージルとの戦いで重症を負い、7時間以上の手術の末、今は生体ポットで意識を闇に落としていた。 彼女を師として戦闘技術を磨いた機人7番セッテは常の冷静さを忘れさせる狼狽を見せ、手術中は泣き続け、泣き疲れた今はトーレのポットに寄り添うように眠っていた。 「…あたしが悪いんだ…あたしが無理にでも出てたら…」 姉妹が傷ついた事実に出動できなかった自分を責め、目に大粒の涙を溜めるノーヴェ。 「何故そうなる、まだお前の武装は未完成だなのだぞ?」 「…チンク姉…」 「何だ?」 「チンク姉は死なないよな…」 トーレの姿に姉妹の“死”を感じたノーヴェは自分が最も恐れることを聞かずにはおけなかった。 「当たり前だ、妹たちを残して逝けるものか、それにな…」 チンクはノーヴェの頭を優しく撫でる。 「もしもの時はお前が守ってくれ。」 ノーヴェはそのチンクの優しさに更に顔を伏せ涙を噛み締める。 「…ぐすっ…うん」 「これこれ、泣くな」 そんな二人を施設内に設置されたカメラで見るものが二人。 「君の作った作品は随分と”人間“らしいな、感動のあまり涙が出そうだよ。」 毛髪の全く無い頭に左右で色の違う目オッドアイに司祭の服を着た男が呟く。 「思ってもない事を言うものじゃないよ、アーカム」 司祭服の男アーカムに答えるのは白衣の狂科学者、ジェイル・スカリエッティ、レリック事件の首謀者にして戦闘機人の生みの親である。 「しかしレリックによる悪魔の従順化は順調のようだな」 「アーカム、君の魔道知識のお陰さ、これからはもっと上位の悪魔の呼び出しを試してみよう、それと…」 「何だね?」 「君の言っていた“半魔”の彼にも興味があるな、戦闘機人や悪魔すら凌駕する力、正に魔剣士という名にふさわしい」 「彼は危険だ、接触には細心の注意を払いたまえ」 地下の闇の中、悪魔を求める男と混沌を求める男は静かに破滅の調べを奏でつつあった。 嬉しかった、バージルさんがシャマルたちを助けてくれたことが…でも現場に急行した私を待ってたんは目に痛いくらいの血の赤に、切り落とされた人の手やった。 「何や…これ?」 「敵を取り逃がした、残念だったな」 私は我慢できずにバージルさんの胸倉を掴んどった。 「そんな事やない!殺傷設定で魔法使ったんか?何でや!?バージルさんなら非殺傷かて出来たやろ!」 「別にお前に力を貸すのにそんな約束はしていない、それともヘリを見捨てた方がよかったか?」 バージルさんはまるで何事でもなかったように血痕を眺めながら答えた。 「安心しろ“未確認の敵個体にやむを得ず”と言えば上には説明が付くだろう、それに敵の一部が手に入ったのだから捜査も進むだろう」 冷静な答えやったし筋は通っとる、私は何も言い返せへんかった。 試運転は上々、術式の構築とデバイスの補助を利用した、高速転移と高貫通力で展開数を増やした幻影剣は、使っても予想をはるかに下回る魔力使用量だった、俺の全魔力の5%に満たない…これならば高町あたりにでも通用するだろう。 この世界の魔道は俺の力を更に高めた…後は最高の力を持つ者との実戦で研ぎ澄ますだけだ、八神には感謝しよう。 だが自分の身内を殺そうとした者まで同情するとは、よほど自分以外の命が失われるのが嫌なようだ、甘すぎる…一戦力の長ならもっと冷徹になるべきだぞ八神。 その他の隊長陣は複雑そうな顔をしていたが、俺の行動にある程度は理解できる様子だった、現場での実戦経験の差だな、結局は八神も他の隊長陣の言葉に落ち着いたようだ。 六課の連中の反応は嬉しさ半分、驚愕半分といった所だ、特にヒヨッ子どもは躊躇のない実戦での殺傷設定魔法の使用に驚いていた(脆い人間ならば躊躇は命取りだぞ…)。 悪魔に対する説明はしなかった、下手に知識を与えて対策を練られては有事の際の“獲物”が減るからな、管理局には無限書庫という大型データベースがある以上は杞憂ではない筈。 例の子供は病院へ搬送された、検査の結果、異常は認められなかったらしいが敵が狙っているとしたら必ずその存在には裏があるだろう…後日、俺も目を通すとするか。 病院にて検査及び治療を終えた保護児童に会いにシグナムに伴われなのはが向かう事となった、そして何故かバージルも同行を申し込んできた。 「すいません、シグナムさん車だしてもらっちゃって」 「なに、車はテスタロッサからの借り物だし向こうにはシスターシャッハもいらっしゃる、私が仲介した方が良いだろう、それより何故バージルまで…」 「気にするなヌエラという尼に少し興味があるだけだ」 なのはとシグナムの話に応えながらバージルは一人、心中で呟く。 (話の流れでは子供は教会か六課の預かりになるらしいな、六課に来てもらわなければ敵が集まらない…更なる“試し切り”の為にも) そんな三人にシャッハから通信が入り、子供の行方を見失ったと告げられた。 シャッハから説明を受け、なのは・シグナム・バージルは子供の捜索を手伝う事となる。 「小さな生命反応を感じるな、こちらか…」 バージルは魔力と悪魔の持つ超感覚で子供の位置を探していた、学んだサーチ魔法を試す良い機会でもあった。 「しかし…せっかくのサーチ魔法の試しが迷子探しか…」 バージルは探った反応に近づきつつ、一人で毒ずく、例の子供はもう目の前だった。 「探したぞ娘」 バージルに声をかけられた子供は身体を震わせ手にしたヌイグルミを抱きしめた、突然声をかけた制服姿の男の眼光に今にも泣きそうになる。 (…やれやれ、烈火、確保した中庭だ) バージルは怯える子供に呆れながらシグナムたちに念話を送る。 「ううっ ぐすっ」 「どうした娘…」 怖がる子供にバージルが面倒そうに聞く。 「ママ…いないの」 「……」 母がいない…どうと言うこともないよくある話。 しかし母という言葉は彼には特別で、そして六課の子供たちやシグナムと触れ合った彼の心には彼自身も気づかぬうちに心の芯に熱を与えられていた。 「…そうか」 思い出されるのは母を喪失したあの日の悪夢、バージルは小さく呟くと手を静かに差し出す。 「来い娘、共に探してやる」 「…ヴィヴィオ」 「何?」 「あたしのおなまえ、おにいさんは?」 「…バージルだ」 ヴィヴィオの手を取ったバージルは少女に歩幅を合わせて歩き始める、ふと幼い頃に母と手を繋いで弟と三人並んで歩いた時の事を思い出していた。 「あれはっ!」 中庭を歩く例の保護児童とバージルを見たシャッハは自分のデバイス、トンファー型の双剣“ヴィンデルシャフト”を機動。 壁を抜けバリアジャケットを装着、臨戦態勢をとり少女の前に降り立つ…がその喉下には音速に達する程の速さで抜かれた閻魔刀が突きつけられた。 「…バージルさん、何を…その子供はどんな危険があるか…」 「お前が勝負を挑んできたのかと思ってな…それに俺は“確保した”と言った筈だぞヌエラ」 一瞬、場には張り詰めた空気が流れる、ヴィヴィオは迫力に尻餅をついて倒れる。 「あうっ」 倒れたヴィヴィオになのはが近づき話しかけていた。 (二人とも落ちついてください、この子は私が見ますから武装は解いてください) なのはの念話が響く、なのははヴィヴィオに穏やかに話しかけ、すっかり安心させていた。 (それとバージルさん…見つけてくれてありがとうございます) バージルは何も言わずにシャッハがデバイスを待機状態に戻したのを確認して閻魔刀を刀袋に戻しその場を離れる、ヴィヴィオはそのバージルに寂しそうな視線を送っていた。 「モテモテだなバージル」 「癒し手のような事を言うな…さっさと連れて戻るぞ」 風の癒し手シャマルのようなシグナムの冗談にバージルはバツが悪そうに応えた。 機動六課隊舎で、はやてはフェイトに地上本部からの査察要請を告げ、そして六課設立の“本当の理由”を聞かせようと聖王教会に行くと話していたとき通信にて泣き喚くヴィヴィオに困るなのはから助けを求められていた。 「エース・オブ・エースにも勝てへん相手がいるもんやねえ」 ヴィヴィオに泣きつかれるなのはを見て、はやてとフェイトは苦笑する。 (フェイトちゃんはやてちゃん、あの…たすけて) 念話にて助けを求めるなのはにはやてとフェイトは微笑んだ、しかし次に発せられたヴィヴィオのセリフに場は凍りつく。 「びえ~ん なのはさんとバージルおにいちゃんがいないとやだ~」 「お…お兄ちゃん?」 「何や…なんなんや?バージルさんこんな幼女にナニを吹きこんどるんや!」 「落ち着いてはやて、別に変な事教えたって訳じゃ」 隊長陣は大いに慌て、フォワード陣も目を丸くしていた。 「ずるい~私もバージルさんの事“お兄ちゃん”って呼びたいよ~ ねえ?ティアもそう思うでしょ?」 「何言ってんの!このバカスバル!」 相変わらず天然オーラ全開のスバルにティアナが突っ込みを入れ、エリオとキャロの年少二人組みは場の勢いについていけなかった… 「どうした?お前たち」 そんな混乱する場所に話題の中心であるバージル本人がやって来た。 「おにいちゃ~ん なのはさんとおにいちゃんがいないとやだ~」 一瞬、不思議そうな顔をしたバージルだが次の瞬間には絶対零度のセリフを放っていた。 「高町が困っている、早く離れろ」 先ほどの混乱の熱は一気に冷め、一同はヴィヴィオに視線をやる、やはり大決壊寸前の泣き顔で目に涙を溜めていた。 (ちょっバージルさん!) (ひどいです!いくらなんでも!) (そうやそうや!男なら責任とらんかい!) 姦しい三人の念話にさしものバージルもたじろぐ、正に悪魔も泣き出さん気迫を三人は放っていた。 「やれやれ…わかった高町がおらん間は俺が共にいよう」 バージルが座って本(デバイス工学 高速無詠唱の課題)を読むなか、その隣では年少組みと遊び疲れたヴィヴィオが寝息を立てていた。 「本当に懐かれちゃいましたね」 「いい迷惑だ」 エリオの言葉にバージルは冷たく返すが、彼に身体を傾けて眠るヴィヴィオには何も言わなかった。 「こらああああ!!バージルーー!!」 突如として騎士甲冑姿にレヴァンティンを持ったシグナムがドアを蹴破り乱入してきた(自動ドアなのだが…) 「今日は模擬戦の約束だろうが!!まさか忘れたとは言わせんぞ!!!」 「忘れてはいない、だが断る」 「しかも、即答か!!」 二人がそんな漫才じみたやりとりを年少組みに見せるなか、ヴィヴィオが起きそうになる。 「…うう~ん」 「烈火よ静かにしろ、起きてしまう」 「ええ~い、模擬戦とその子供のどちらが大事だ!!」 「高町らと約束したのでな、今日は諦めろ」 二人のそんなやりとりは、なのは達が帰って来るまで続いた。 聖王教会ではカリム・クロノ・はやてから六課設立の真の目的“管理局崩壊の阻止”がなのはとフェイトに語られた、その中でなのはとフェイトの倒したアンノウンの話が浮かぶ。 「それにあの“死神”とか“悪魔”とか分析班の言っとった黒いアンノウンもおるしな…」 「悪魔ねえ、あの男の関係者ってことか?」 はやての言葉にクロノが返す。 「そんな事、言わんといて!バージルさんはフォワードの子らにも良くしてくれてる、シャマルだって助けてくれた…」 「でも得体が知れないのは確かだ、殺傷設定の魔法を使ったって話しも聞いた、今だから聞くが君たちは彼をどう思っている?特にはやては」 三人は揃って複雑そうな顔をする。 「きっと…悪い人じゃないと思うよ、ヴィヴィオも懐いてくれたみたいだし」 「私もなのはと同じ意見、エリオ達もお世話になってるし」 「私は…」 なのはとフェイトは即答するがはやては口ごもる。 「はやて、君は一部隊の責任者なんだぞ!下手な同情で爆弾を抱えて部下を危険に晒したいのか!」 俯くはやてにクロノは叱責を飛ばす。 「確かに同情もあった!けど…私は嫌なんや人の一番大事なもん奪うんは!」 はやては目に涙を浮かべるが決して曲げない意志を込めた強い瞳でクロノを見据える。 「もし私らがバージルさんを厳正な法の目で見るなら、アミュレットを奪わなあかん、そしたら絶対に血が流れる、人の大事なもん奪って傷付け合って…そんなん絶対に嫌や!」 クロノははやての眼力に圧せられ何も言う事ができない。 「私はもう…誰かが目の前で大事なもの奪われるんは見たくない…」 思い出されるのは10年前、それは”闇の書事件“で目の前で消されたヴィータに悲しみと絶望の涙を流した時、そして雪の降る中を散っていった管制人格、初代リィン・フォースを失った記憶。 「それに市街地での殺傷設定魔法の事やったら部隊長の私の責任や…」 「はやて…なにもそこまで」 「クロノがそんな事を言うからよ、はやて…クロノも心配で言ったんだから泣かないで、私も彼は悪い人じゃないと思うわ」 狼狽するクロノにカリムが助け舟を出す、結局バージルの件はクロノが出身世界を調べ、表向きは時空遭難者として人間でない事は六課隊長陣とクロノにカリムのみで口外無用となった。 高町らが帰ってきて結局は烈火とやりあう事になった(本当に戦闘狂だな)、俺はまた戦いで“熱”を持った心身を冷まそうと宿舎屋上で夜空を見ていた。 ふと幼い頃に母が口ずさんでいた歌が静かに口から漏れる。 「どうした?」 屋上出入り口に今日覚えたばかりの気配を感じて声をかける、ドアから出てきたのは予想どうりヴィヴィオだった。 「うう…」 「寝れんのか?」 「…うん」 寝付けず、不安で部屋を無断で出てきたんだろう、やれやれとため息をつく、このまま駄々を捏ねられても困る、早く寝かせるとしよう。 「こちらへ来い、冷えるぞ」 そう言うとヴィヴィオは迷うことなく俺の隣へ腰掛ける。 「さっきのおうたは?」 「昔、俺の母が歌っていた子守唄だ」 「おにいちゃんのママ?いいなママがいて…」 「とっくの昔に死んでいるがな」 「えっ…」 八神や六課の連中にもしていない母の話が何故かこの時は自然と口に出た、烈火のつける熱はやけに俺の理性を溶かす… 「それじゃあ…ヴィヴィオのママも?」 「何故そうなる?俺の母とは無関係だろうが…お前の母はそのうち見つかるだろう」 「ほんと?よかった」 また泣きそうになるヴィヴィオを慰める…気休めだな、この娘は人造魔道師素体だとか言うものらしい、詳しくは知らんが“本当の母”などいない。 「おにいちゃん、おうたきかせて」 「…いいだろう」 俺は隣に座ったヴィヴィオに聞こえる程度の声で、また懐かしい歌を聞かせた、ヴィヴィオは10分もしない内に寝息を立てていた。 「本当にどうかしているな…俺は」 俺は高町にヴィヴィオの旨を念話で送り、また小さな声で口ずさむ“悪魔は泣かない”と言う名のあの歌を… 続く。 前へ 目次へ 次へ
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SS作成方法 ダンゲロスSS5に投稿するSSの作成方法・内容の指針を説明します。 作成するSSの大枠について 今回のゲームでは、参加キャラクターはトーナメント形式で戦い、大会優勝を目指すことになります。対戦相手を自慢の特殊能力で打ち倒し、すべての戦いを制しましょう! ゲームの世界観等の詳細は基本設定・用語集・大会プロローグをそれぞれご確認ください。 作成するSSの対戦相手・舞台について 開催期間中、設定された日時に全試合のマッチングが発表されます。(ランダムで決定)詳細についてはトップページのスケジュールをご確認ください。 その際に、各戦闘が行われる地形も決定します。(ランダムで決定)詳細については戦闘地形をご確認ください。 第1回戦のマッチングについて 第1回戦のマッチングのみ、ランダムではなく予選投票で最多得票された相手とのマッチングになります。 詳しくは予選投票の該当部分を参照してください。 戦闘地形はランダムで決定します。また、第2回戦以降は組み合わせもランダムになります。 作成するSSの試合のルールについて ゲーム内の大会で規定されている勝利条件は以下の通りとなります。 対戦相手の死亡 対戦相手の戦闘不能 対戦相手の降参 対戦相手の戦闘領域からの離脱(試合場による) また、以下に抵触した場合は反則負けになります。 試合時間以外での戦闘行為(ただしサンプル花子とのスパーリングを除く) (2/5追記) 対戦相手以外に危害を加える(ただしサンプル花子を除く) (2/5追記) 試合場外の物を破壊したりする 試合の開始時刻に会場に間に合わない 5時間以内に決着がつかない(両者敗北) 作成するSSの内容について キャラクターの設定や能力の応用方法について、キャラクターの設定欄に書かれていないことであっても、後づけで設定を足すことは(それが相手キャラクターに関することであっても)可能です。もちろん無理な後づけは読者を納得させるだけの説得力を持たせる必要があるでしょうから、十分に注意しましょう。 勝ち残ったSSはその時点で今回のゲームにおける「正史」となり、そのSS内で登場した新たな設定なども公式のものとなります。そのため、二回戦以降は対戦相手のキャラクター説明だけでなく、相手が勝ち上がってきた過程のSSも読むように心がけましょう。 SSは試合のみを書く必要はありません。執筆時間内に書ける範囲で試合の前後を膨らませてもよいでしょう。 幕間SSについて 試合のSSだけでなく、試合外での参加選手同士の交流や、自分の(場合によっては相手の)キャラクターの設定を深める幕間SS(補足SS)を作成するのもよいでしょう。 幕間SSは雑談スレッドをご利用ください。 幕間SSに投稿期限はありません。好きな時に書きこみましょう。 ただし、幕間SSについては特にwikiに反映などはされません。あくまで必ず読む必要はない世界観の掘り下げ程度に留めましょう。 自キャラ敗北SSについて 今回のキャンペーンでは、「対戦した結果自分のキャラクターが敗北する」内容のSSの作成はご遠慮ください。 試合の結果として、必ず「自分のキャラクターが勝利する」内容のSSを作成してください。 その他 今回のキャンペーンは、従来のキャンペーンのように「第〇試合」と試合順を決めてSSを募集するのではなく、投稿後にその試合の対戦SSの合計文字数が少ない順に上から並べます。 文字数自体はテーブルの色と同化する形で記載し、必要に応じてドラッグして確認することができるようにします。 プレイヤーは以上のルールを把握した上で自分のキャラクター、相手のキャラクター、地形の設定を踏まえつつ、自分のキャラクターが戦闘に勝利するSSを書いて投稿してください。 SS投稿方法 ダンゲロスSS5に投稿するSSの投稿方法・諸注意を説明します。 SSの送信方法について 本戦SSが出来上がったら、本戦SS投稿フォームから送信してください。 フォームには以下の項目があります。 キャラクター名 メールアドレス 引用する幕間SS(なければ空欄で構いません) 掲載順希望(SSの掲載順について希望があればチェックしてください。なければ空欄で構いません) SS本文 メール返送チェック(確認メールが自動送信されます。従来のGKによる確認メールの代替となりますので、必要な方は忘れずチェックを入れてください) フォームに誤作動等ありましたら、SS5スレッドかTwitterアカウントにご連絡ください。 SSの投稿時間も、この返信内容で確認可能です。投稿時間は、掲載順希望の優先権や同数得票の際の勝敗等に関係します。詳しくはこのページの下にある【同数得票について】をご確認ください 時間制限の関係上、メール宛先のミスや本文の文字化けのリカバリーは大変困難です。 本戦SSにいかなる不備があろうと、それがGK側にのみ責のある不備以外のものについてSS公開後の修正に応じることはありません。 (3/1追記) 練習用ページ(SSページ)などを活用して事前に見栄えをチェックしつつ、早めの投稿を心がけましょう。 (3/1追記) 内容修正について 投稿されたSSは、投稿期間終了後に一斉に公開されます。 投稿期限前であれば、SSの追記や修正は自由に行うことが可能です。本戦SS投稿フォームより再度送信してください。本戦SS投稿フォームの「回答を編集」で編集を行ってください。 (3/1追記) ただし、再送信されたSSの投稿時間は、その追記が投稿された時点として扱うことになります。 最初に投稿したSSを破棄し、別のSSを投稿することも問題ありませんが、こちらについての投稿時間の扱いも、上と同様です。 修正を含めた複数回のSS送信があったキャラクターについては、原則として一番最後に送信されたSSを正式採用させていただきます。 ペナルティについて 投稿期間を超過したSSは、時間に応じて下記のペナルティが与えられます。遅刻が確定した時点で、その試合の得票からマイナス5ポイント 以降、超過1分ごとにさらにマイナス5ポイント例:締め切り時間から30分の遅刻…得票から150ポイントのマイナス 1時間の遅刻で強制的に敗北が決定 ペナルティによって最終的な得票がマイナスになったとしても、即座に敗北になることはありません。相手のマイナスのほうが多ければ勝利します。 万が一、対戦者全員が1時間の遅刻をした場合、両者敗北扱いとなります。 なお、GKは投稿期限後1時間経過まで修正稿を待つことはなく、全員分のSSが一度でも出揃った時点で全SSの公開準備に入ります。GK負担の削減のため、ご了承ください。 (3/1追記) 参加者の皆さんは、可能な限り時間に余裕を持った投稿を心がけてください。 同数得票について 投票結果が同数であった場合には、投稿の早かったプレイヤーの勝利となります。 SSの投稿を終えたら 他のプレイヤーの試合SSを読んで、面白かった作品に投票しましょう! 投票の仕方については次のページ【本戦投票】をご確認ください。
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相手キャラの死亡・入院・失踪・退学・転校等による劇中からの退場によって勝利となります。戦闘がある場合には終了後のダメージリセットはありません。応急処置による体力の回復は、自然な形であれば有りです。 今回のテーマはホラーですが、能力バトル要素があっても問題ありません。 逆に能力バトルである必要もないので、百物語のような怪談会スタイルのSSでもありです。